「あなたの話はなぜ「通じない」のか」山田ズーニー(ちくま書房)
- 作者: 山田ズーニー
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 文庫
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概要
「ほぼ日刊イトイ新聞」のコラムで知られる著者によるコミュニケーション論、「あなたの話はなぜ「通じない」のか」の文庫版。
高校生向けの小論文講座の編集と自らの独立経験をベースにして、他人に何かを伝えるにはどうすればいいか、その技術とスタンスについて考察していく。
本書の内容をおおまかにまとめるとすれば、冒頭に掲げられたコミュニケーションの五つの基礎に集約されるだろう。
すなわち
- 自分のメディア力を上げる
- (話す内容の)相手にとっての意味を考える
- 自分が言いたいことをはっきりさせる
- 意見の理由を説明する
- 自分の根っこの想いにうそをつかない
である。
自分のメディア力を上げる
要するに自らの発言の信頼性を高めること。おおむね人間は他人の発言の真偽や重要性を属人的に評価する。従ってコミュニケーションの一番の基礎は著者言うところのメディア力、言い換えれば自らの影響力を高めるところにある。
相手にとっての意味を考える
自分には自分の興味関心があるように、他人にも各人固有の興味関心がある。人はその興味関心から外れる話はなかなか聞こうとしない。敷衍すれば、人は自分にとって無意味な物事にリソースを投入しない。従って人に何かを伝えるためにはまず前提として問題意識の共有が必要となる。
自分が言いたいことをはっきりさせる
問題意識の共有のためには相手方に問題そのものを理解してもらわなくてはならない。そのため自分が言いたいことをはっきりさせることで問題の輪郭を明確に切り出す。問題意識を自らの思考によって抽出する過程は、自らの行動指針を定める手がかりともなる。本書ではこの「考える技術」についても多くのページを割いて論じている。
意見の理由を説明する
意見と理由を繋ぐ論理とは説得の技術でもある。しかし、この場合でも自分にとって都合のいい理由付けはコミュニケーションを良い方向に向かわせない。理由とは相手の利害関心と繋がる、より普遍的なものであることが好ましい。
自分の根っこの想いに嘘をつかない
著者はある人の根っこにある想い・発言の動機を「根本思想」と名付ける。それは人の言動を裏打ちするものであり、それが無い言葉は人を動かさない。
以上五つの基礎を本編ではより詳しく論じていく。
覚書
話が通じるとは、勝ち負けでなく、あなたと相手の間に橋を架けるようなものだ。
p12
雑感
わりとベタなビジネスコミュニケーションのハウツーもの。普段あんまりこの手の本は読まないのだが、以前から気になっていたところを文庫版で出ていたのを発見して購入。
全般に普段の生活のなかでもよく考えていけば出てくる正攻法のコミュニケーション技術論だが、こういうふうにまとまっているのは重宝する。
それにしてもわりとコミュニケーションスキルがある人ほど「考えること」の重要性を強調する傾向がある気がするが、どうなんだろね。基本的に人間の行動というのは意識的にコントロールできる部分には限界があると想うのだが、「考えること」が長期的な自己コントロールに際してブレイクスルーとなったりするのかも。
あと本書の白眉はやっぱり「自分の根っこの想いに嘘をつかない」ってところだろうねえ。著者は「根本思想」と表現しているけど、*1そういうその人のコアにある世界観、人生観、人間観っていうのは巨木の根のように人の行動、発言を支配しているのだろう。そこからあえて外した言動をとってみてもどうしても上滑りするし、なにより気持ちが悪いものだというのはよくわかる。まあそういうときは取りたい言動にマッチした価値判断を自分の中から探すわけですが。それよりも何よりも自分の信じているものと言葉とが一致するってのは力になるんだよね。言葉が最も力を持つのってその瞬間だし、そういう強力な武器を放棄してしまうのはもったいないことだと思う。
ところで「ズーニー」ってなに?グーニーズの親戚かなんか?
*1:まあ些細な問題だけど、「メディア力」とかこの手の編集上がりっぽいネーミングセンスってちょっと苦手だw