ラストレター 岩井俊二

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国内作品監督としてはリップヴァンウィンクルの花嫁以来ということでいいのかな。岩井俊二の新作。仙台を舞台にある女性の自死から始まる手紙とコミュニケーションの交錯が誤解と偶然に導かれて過去の恋とその悲劇的な結末を描き出していく、と説明するとなんだかありきたりのラブストーリーにも思えるけど、そんなプロットの凡庸さを吹き飛ばすぐらい構成が緻密で練られた作品でしたよ。登場人物の意図と行動と関係性を因果の糸としたときに、彼らの糸のような過去と関係性がストーリーが進むにつれて少しずつ少しずつ現れては繋がり、絡み具合も増していって、最後に全て現れた糸が繋がって解きほぐされた時の過去の再生と救済のカタルシスがこれぞ映画というほどの出色の出来になってます。映画の文法に実に忠実に、叶わなかった過去の恋と記憶の糸を丁寧に丁寧に何重にも結んでより集めては解きほぐしていく、その道筋がとてつもなく綺麗でセンチメンタルで王道の作品。世に素晴らしい映画は数あれど映画って何と聞かれたら近年ならこれを挙げたいというくらい丁寧に作り込まれた良作と思う。しかし庵野監督って普通に役者やるようになったのね。