「キーチ 第八巻」新井英樹

キーチ!! 8 (ビッグコミックス)

キーチ!! 8 (ビッグコミックス)

新井英樹久しぶりの新刊。なんというかすごいことになってきたね。多分これはかなりぶっ飛んだ展開なんだろうけど、もう慣れた、というのが正直なところ。甲斐君はやっぱりあり得ないと思うが。
で、全体的にテーマが明確になってきたというか、まあ新井英樹のよく使うモチーフだけど、力と道徳のお話が前面に出てまいりましたね。ここで要注目なのは、キーチ君自身は「弱い奴が嫌い」とか言ったりして、もろ「力」側の人間なんだけど、行動が「道徳」側なのは、別にキーチ君が道徳的だからじゃなくてキーチ君自身にそういった行動指針が生得的に*1備わっているからだという描き方がされていることだろね。*2キーチ君のよくいう「約束だ」っていうのは多分そういう効果を狙ってるんだと思う。で、実際その手の台詞を吐くキーチ君はすごくかっこいい。毎度のことながら新井英樹って巧いねえという感想を抱いた。
じゃあ実際こんなことってあり得るの?って言うとよくわからん。確かにキーチ君と愉快な仲間たちの活躍はリアリティ溢れるものとして描かれているし、そこにはもちろん勧善懲悪的なカタルシスもある。力と道徳が調和する美しさというのもある。でも、こんな奴実際にいるか?神懸かりのカリスマ小学生。そういう意味では「キーチ」っていう漫画はよく描けたファンタジーなのだとは思う。
ま、それはそれとして、個人的にはこれからどこまでキーチ君が世界を動かすことができるのかに期待。個人的には現状秩序側の人間としてキーチ君の前に立ちふさがるキャラの登場をきぼん。TWIMのユリカンみたいなやつをひとつ。
ところでRINの方はどうなってるんですか?単行本派なのですっ飛ばしてたらいつのまにか消えていたのですけど、もしかして打ち切りですか?違いますよね?頼むよホント。

*1:というべきか、性質として、というべきか。

*2:ここらへん多分進化心理学的なお話も出来るのだろうなあ。