「社会学の根本概念」マックス・ウェーバー(岩波文庫)

社会学の根本概念 (岩波文庫)

社会学の根本概念 (岩波文庫)

■概要
マックス・ウェーバーがその晩年に、社会学上の重要な概念を定義しようとした著作。
社会的行為や、社会的秩序、団体や権力などに関する定義が、あるいは微細に、あるいは簡潔にまとめられている。
■覚書
●当事者が経済的利益を目指して純粋目的合理的に行動すればするほど、ある状況に置ける彼らの行動が似通ったものとなり、ここに科学としての経済学成立の基礎がある事を指摘。p48
●競争が排除されたと想像しても―ユートピア理論的には可能であろうが―生存及び残存のチャンスをめぐる(潜在的)淘汰における勝利を生む事になり、遺伝的素質としてにせよ、教育の結果としてにせよ、この残された闘争手段を駆使する人間に有利に働くのである。こうして、社会的淘汰は、経験的な意味で闘争の排除を阻止し、生物的淘汰は、原理的な意味で闘争の排除を阻止する。p64
●闘争による「淘汰」について:これらの原因は多様なので、それを一つの言葉で表現するのは適切と思われないこと。一つの言葉で表現すると、どうしても経験的研究のなかへ勝手な評価を持ち込む危険が生まれる。とりわけ、具体的ケースに付いてみれば主として純粋個人的な条件による成功、その意味で偶然の成功であるのに、これを理論的に弁明する危険が生まれるものである。p66*1
■雑感
数理化以前の社会科学の空気が濃厚に匂ってくるような著作。このような明晰性への欲望って僕はかなり好きではあるのだけど、全体を貫くあるコンセプトみたいなものにいまいち馴染めなかった。
なんというか、これって19世紀的な自由意思論をベースにしてるんだと思う。つまり、自由な意思決定*2による行動とそれ以外の要因による行動との対立軸を立てて社会的行為を分類していて、それはそれでいいのだけど、あんまりクリヤーな理論とは思えなかった。今人間行動を自由意思によって分類するメリットってあんまりないと思う。
団体の行為を個人のレベルにまで分解しているところはまあ20世紀初頭の議論としては普通。後は個人的に第八節「闘争の概念」が面白かった。

*1:逆に理論的にうまく行くはずのものが偶然の要因によってうまく行かなくなってしまうってこともあるよね。その一回きりの偶然を乗り越えるところに人間の栄光と悲哀がある、というか。ここらへん凄く面白いテーマだと思う。

*2:とそれを阻害する要因