「システムの科学」ハーバート・A・サイモン(パーソナルメディア)

システムの科学

システムの科学

  • 作者: ハーバート・A.サイモン,稲葉元吉,吉原英樹
  • 出版社/メーカー: パーソナルメディア
  • 発売日: 1999/06/12
  • メディア: 単行本
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皆様は「システム」と聞くと何を思い浮かべるのでしょうか。まずは工業的なシステム、例えば一番最初に思いつくのが今皆様の使っているコンピュータ・ソフトウェアが挙げられます。これらシステムは現代では社会インフラとしてあちこちで使われています。例えば銀行ATMとかもそうですね。また工学的なシステムの他にも社会制度もまたシステムと呼ばれます。例えば法制度とか組織制度などがその代表です。このような種々雑多なものごとを表現する概念が「システム」であります。ウィキペディアの定義を借りれば「相互に影響を及ぼしあう要素から構成される、まとまりや仕組みの全体。系。一般性の高い概念であるため、文脈に応じて体系、制度、方式、機構、組織といった多種の言葉に該当する。」*1ということになりますでしょうか。
さて、上記の通り「システム」という概念は非常に柔軟性があり、その射程は何らかの合目的性を持って機能を果たすありとあらゆる「仕組み」に及びます。
本書はそのような「システム」のなかでも、主に人間が作り出す「人工物」としての「システム」に焦点を合わせ、経済学、認知心理学、工学的デザイン論の知見を駆使して「人工物」の科学を提唱するというんだからなんだか凄い。刺激的だぜ。
戦後の経済科学における意思決定研究のダイジェストが付録についてて、これもなかなか興味深い。ただ、この本なんだか凄い読みにくいのね。話が凄まじく錯綜してるし、要求される予備知識もかなり高度。小生もどこまで理解できたかは謎。要するに、意思決定や認知の話を掘り下げつつ、その知見を具体的なシステム構築に援用するとどうなるかってのが延々続いております。これは五年後とかに読みなおすとまた凄いの、か、も。
著者は米国カーネギー・メロン大学教授で、経済学、政治学、心理学、コンピュータ・サイエンス、経営組織論など各種の学問分野を横断し、ノーベル経済学賞やコンピュータ・サイエンスでのノーベル賞とも言うべきチューリング賞を受賞している凄い人。