「RIN 第一巻」新井英樹

RIN(1) (ヤンマガKCスペシャル)

RIN(1) (ヤンマガKCスペシャル)

「SUGAR」の連載誌休刊からヤングマガジンに舞台を変えてようやくの第一巻、なんだけど。
うーん、不愉快w
この漫画7割ぐらいは悪意でできるのではなかろうか?と思うぐらい読んでて不愉快な漫画。「SUGAR」も中盤あたりからどんどんリンが感じ悪くなって行く様が描かれていたのだが、連載再開一発目の世界戦からもう悪意丸出しで飛ばしに飛ばしている。ある意味で新井英樹に取っては褒め言葉だろうから言うのだが、本当に人を不快にさせる漫画を描かせたら天下一品だろう。
単行本派なので連載自体は追っていなかったのだが、これをヤングマガジンで連載させようと思った編集者は色んな意味で凄いと思う。で、案の定別冊の方に左遷されてしまったようだけど、まあそれもむべなるかなという展開。詳しくはネタバレになるので書かないが、そもそもヤンマガってヤンキー系漫画が多いわけで、そういう雑誌でああいうネタをやってしまうのは商業的にチャレンジングというよりは読者への嫌がらせに近い(笑。
確かにその手の漫画自体は僕も別に好きではないのだが、この漫画はそういった特定少数の人々が不快になるだけではなく、世の99%を占める凡人を敵に回しかねない危険な作品だろう。ひたすらに利己的でどん欲に自らの生を全うし、他者を蹴落とすことをためらわない才能の塊。無論蹴落とされるのが相対的に弱い生き物である以上、天才が蹴落とすのは有象無象の凡人である。本作でも主人公リンはその天才ぶりを余すところ無く発揮し、凡百のボクサーたちを徹底的にいたぶり嘲笑し叩きのめす。問題なのはその舞台が必ずしもリングの中ではなく、むしろリングの外の世界が天才リンの活躍の舞台として描かれていることだ。
ここに来て新井英樹の描こうとするものがはっきり浮かび上がってくる。それは生命そのものとも言える根源的な個人の姿だ。この地上に最初の生命が誕生してから現在に至るまで、延々と繰り返されきた淘汰の歴史が示すように、生きるということ自体が自らのわがままを通すことだ。新井英樹はそういう残酷な世界で足掻きながらも生き抜く個人をずっと描いてきた。では、そんな人間像がボクシングという領域に限定されているとはいえ圧倒的な力を持つと何が起こるか?この「RIN」という漫画は装いはボクシング漫画でありつつも、その内実は新井英樹がこれまでに描いてきたものの延長なのだ。
あ、全然関係ないけど新井英樹の描くヒロインってなんで顎の下がぷよぷよしてるのかね?そういうのが趣味なの?って思って前から非常に疑問だったのだけど、今日の宮崎ぁぉぃ先生も少し顎の下がぷよっとしてい「非常に柔らかそうであるなあ」って思ったので不問に付すこととする。ところで鏡見たら僕も顎の下が若干、とかいう話はどうでもいいですね。はい。