「もやしもん」石川雅之(講談社)

もやしもん(1) (イブニングKC)

もやしもん(1) (イブニングKC)

これは第一巻発売当初からあちこちで名前を聞くようにはなっていたのだが、個人的に部屋にものが増えるのが嫌なので漫画単行本購入を控えていて買うまでには至らなかった。読んでみてもっと早く買っておけば良かったと痛感。
まず目につくのが主人公の設定である菌が肉眼で見えるという能力なのだが、これがギミックとしてよく出来ていて基本的に菌にまつわる小ネタをどんどん膨らませていく形で物語は展開していく。トリビアとしても菌類に関わる知識が詳しく書き込まれていて面白い。
しかし、この漫画の面白さの核になっているのはこのようなトリビア的な要素というよりは何よりも農大の生活描写ではないだろうか。例えば二巻に置ける一連の農大祭シリーズが示すような大学という共同体内での馬鹿騒ぎの類いはなんだかんだいって楽しいものだ。それが現実の生活ではなかなか得られにくいということもこの漫画を魅力的なものにしている理由の一つだろう。そして、そのような意味からすればげんしけんなどを含めた正統派学園モノの系譜に連なる作品としてこの漫画は捉えられるべきと言える。またこのことは、例えばジャンプ系の王道漫画が様々な意匠を凝らしつつもその面白さの源泉が共通していることにも構造が似ている。*1人間を描くことに成功した作品はその纏う衣装が何であれ面白いものになりうるのだ。
さて、特に意識的に描かれたテーマらしきものもなく進む物語であるが、*2樹先生関連で色々張られた伏線が本筋になったりするのでしょうか。それはそれで面白そうな話であるのでとりあえず今後に期待。言い忘れてたけど出てくる菌がなかなかかわいいです。個人的にはP・アクネスがお気に入り。*3

*1:ここで念頭においているのはアイシールド21だったりする。テニプリとかじゃねえぞ。

*2:もちろんそれは以上の観点からすれば欠点ではないのだが。

*3:「何だこのニキビ菌め」「むきーかもすぞー」のとこね。