「With Teeth」Nine Inch Nails

ウィズ・ティース

言わずと知れたオルタナティブ・ロックのカリスマ、トレント・レズナーの最新作。デビューはもう十年以上前になるのだが本作がフルアルバムとしては四作目ということで、凄い寡作の人なんですね。まあ、それもそのはず、それぞれの作品を聴いてみれば分かるようにアルバムごとに籠っている情念というか怨念がただごとではない。叩き付けられる硬質のビートと、混沌そのものといった趣のギターノイズ、さらに乗っかるは憂鬱そうなボーカル*1に厭世的なリリックと実にツボを押さえた作りです。メロディーも結構いいんだよね。
そういえばNINを聴き出したのが前作ザ・フラジャイルからだからもう六年前になるのか。そのころも僕は個人的にダウナーな時期にあって毎日二枚組のCDを繰り返し聴いてはぐったりしていたのだった。通しで二百回近くは聴いたんじゃないだろうか。九十年代絶望ロック最高峰といってもいいだろう。それに比べると今作は若干情念が薄いような気がしてならない。サウンドプロダクション的にもあんまり音が詰め込まれていない感じだ。なぜだろう。
トレント・レズナー御大自身も前作を出してからアル中になったりしてひどい状況だったようだが、最近はなんとか復活して好調な日々らしい。最近のインタビューなどを読む限り実に健康そうである。不愉快な。さてはここらへんが原因だな。クリエイターの面々におかれましてはもっと不幸になって頂きたい。アルコール、ドラッグなどを過剰摂取し、人間関係は崩壊し、悪徳レコード会社には搾取され、何もかも嫌になり引き蘢ったうえで溢れ出す情念を表現して頂きたい。普遍的な傑作は個人的な不幸が昇華されることによって生まれるのであります。願わくば御大が更なるご不幸に見舞われますように。うそ。みんな幸せになれるといいよね。

*1:褒めてますのよ。