人間的な、あまりに人間的な

http://2.suk2.tok2.com/user/mig29/ *1

これについてはもうずいぶんネット上で広まっているだろう。
隊長のところで紹介されていたのを少し読んでみて、いろいろと思うところあったものの放置していた。少し騒ぎも治まってきただろうから書いてみる。
著者はついこの間自殺するため警察官から銃を奪おうとして逮捕された男である。
このブログでは彼がこの一年半にかけて何を考えて生きてきたのかが赤裸々に綴られている。昨今いわゆるニートとして表現される一つの人間類型として非常に興味深い。
彼は理科系の大学に進学したものの、勉強があまりにつまらない。どちらかというと社会科学系の学問の方に興味があり、そちらの勉強をするため大学をやめてしまう。いや、他のことをするというより大学に束縛されるのを嫌った結果故か。それにしたって宮台や東ではなあと小生などは思ってしまう。その後の彼は一旦就職などをしつつも人間関係に疲れてやめてしまう。自衛隊に入ろうとするも年齢制限により諦めざるを得ない。八方ふさがりの状況で鬱の症状も悪化し、ひたすら自殺を考えて引き蘢る日々。そして拳銃強奪未遂。
彼が大学をやめてからの日記はかなり瑣末で面白くない。これから何をすれば良いのか思い悩んだあげくデイトレなんかをはじめたりしているが、現代の占星術たるテクニカル分析なんぞで儲かるはずもなく結局やめてしまったようだ。彼の望みはなんだったのだろうか。彼は何度も自由になりたいと言う。大学から、人間関係から、親から。どれも消極的な欲望だ。でも彼にその力はなかった。彼の積極的な欲望はパイロットになることだったようだけれど、それもかなわず両親への恨みつらみを書き募る。
読み込むほどに、彼が小生と紙一重のところで道を違えていったことを思い知らされずにはいられない。何が違ったのだろう。そもそも彼が持っていた鬱病の気か、あるいは彼が愛していた読書から生きていくのに必要なものを手に入れられなかったのか、はたまた父親の問題か。
父親。彼の興味は規範的なものに向かっていたのだが、それが彼の父親の強権的な性格と繋がっているように思えてならない。彼の昨今の若者とやらに対する憤りは実にモラリスティックで求道的だ。曰く、人生の意味とは何か、いかに生きるべきか、どうして現代の大学生はこのような議論を避けるのか云々。この他者に対する強烈な規範意識というのは支配欲と表裏一体なのではないかと思う。
他に道はなかったのだろうか。むしろ捕まってよかったという意見もある。しかし、堀の中から出てきて何が変わるのだろうか。彼がこの先生きていく希望を持つとするならば、彼をここまで支配してきた強烈な欲望を捨てなければならないだろう。もしかして、その辺りの自覚はあるのかも知れない。しかし、彼は社会に洗脳されていると言ってそれを拒否する。洗脳だなんて言い切ってしまう傲慢こそが彼の苦悩の元凶なのだろうが、この屈折した自己保存の欲望(そう。恐らくこれは自己防衛なのだろう。)が消えることはまずないだろう。
それでも、彼が生きていくことのできる場所を見つけることを願ってやまない。

*1:2005/9/9追記:本家は既に消滅。まとめサイトを発見したので貼っておく。