「僕の小規模な失敗」福満しげゆき

僕の小規模な失敗

僕の小規模な失敗

今更語るのもなんだけど書いておこうか。この漫画買ったの去年だけど。
名前のわりには全然幸せそうじゃないアックス系漫画家福満しげゆきによる自伝的私マンガ。実はこれ以外の福満作品読んでないのだけど、どこかの評論か何かで数ページ見て衝撃を受けて購入。ストーリーとしては何をやってもダメなマンガ以外取り柄無しの主人公の日常雑記。タイトルに小規模な失敗とあるがまさにその通り。
主人公は東京多摩出身のダメ人間。*1高校受験に乗り遅れ工業高校に入学するが現状打破のため授業時間をマンガ描きに費やし留年後中退。*2自活するため友人と二人暮らしを始めるが、相手に彼女が出来てしまい居づらくなって結局実家に戻る。その後なんとか定時制高校に滑り込んで卒業した後、大学に入学するがそこでも孤立し「大学敷地内のなにか用途不明の地下みたいなところでたいはんの時間を過ごすことになった」*3という、あらすじだけからでも強烈なダメ臭が漂ってくるほどのダメっぷり。とにかく主人公と彼をとりまくダメ人間の日常における様々なダメディティールがこれでもかと描かれているワタクシマンガの鑑と言っていい秀作。
こういうものを読んでおもしろいと思ってしまうのも、まあ要するにダメ人間類型の人なのだろう。しかし確かにここには世の中全体を見ても結構な割合を占めるであろうダメ人間、あるいは人間のダメな部分がリアリティを持って描かれている。そこに共感するか否かはともかくとして「人間」を描くことに成功した作品として僕は評価したいと思う。
ところで結構驚いたのだがこのマンガの舞台となっている某地区は僕の実家の近所で、僕自身もよく見知った場所がたくさん出てくる。というかまさにこのマンガに描かれているのと同じ時期、同じところに僕は住んでいたので、もしかしたら作者とスレ違ったりしているかもしれない。ここだけの話、あるシーンで主人公がとったある行動と同じことをしている人がいるのをマンガと同じ場所で見たようなおぼろげな記憶があるのだが、はたしてどうなのだろうか。*4

*1:こんなこと言っていいのかな?でもダメ人間だよね。

*2:そもそも工業高校というところがどういうところなのか全く分かっていないのに入学してしまったため。

*3:読むきっかけとなったのが衝撃のこのシーン。「用途不明の地下」ってところがすごくリアルだ。

*4:ちょっと変な行動なので「何してんだろあの人」と思って覚えていた。