「山口晃作品集」山口晃(東京大学出版会)
- 作者: 山口晃
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: ペーパーバック
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山口晃という絵描きをご存知だろうか。最近では日本橋三越や六本木ヒルズの広告が代表作として有名だろう。美術手帖で会田誠とともに特集を組まれたので、もうよく知っているという慧眼の士もそれなりに居るかもしれない。調べたらはてダのキーワードにも既にあるようだ。さすが人文系。それはどうでもいい。
僕は絵画という表現形式には結構疎い。なので、この人の現代日本画壇のポジションもよくわからない。*1しかし簡単に説明すると、油絵の具を使って大和絵調の鳥瞰図や合戦の描写をする独特の作風で有名な人だ。作品のなかで主に描かれているのは奇妙に融合した古今東西の文物。特に頻繁に描かれるバイクから馬が生えているような変な乗り物が面白い。他には旗印として使われるニコちゃんマーク、戦陣のパソコンでエロ画像を閲覧している侍、陣の外でゲバ棒を持ち火炎瓶を抱える過激派など、それらが実に細密な描写でみっしりと描き込まれている。
まったくおもちゃ箱をひっくり返したような想像力だ。一体この人は何を考えているのだろう。インタビューなどを読むと思うまま描きましたという印象だが、作品ごとに付けられたコメントやおまけの漫画のようなものを読むにいろいろと考えている風でもある。とはいえ、この絵の面白みを言葉で表現するのは困難だし、不毛だろう。*2例えばポストモダニズムの芸術作品だと理論が主で作品が従だったりで、言葉で語られうるのだろうが、どうも山口晃の絵はそうではない。*3学問的にやるとしたら認知心理学あたりの領分ではあるのだろうが、にやにやしながらちまちました細部の描き込みをながめるのも楽しいものである。
それはともかく、山口作品にはかっこいい機械や武器の描写が多く割合オタ受けしそうな画風ではある。それにも関わらずネットでの言及をほとんど見たことが無いのは、やはり絵画だからだろうか。サブカル方面ではそれなりに知られているようだ。