最近読んだもの 20160504

 

昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐 (中公新書)

昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐 (中公新書)

 

 

 昭和陸軍の政策グループであった一夕会とその領袖、永田鉄山の思想と人脈によって昭和陸軍の政策構想とその帰結を読み解く一冊。満州事変から日中戦争、やがては第二次大戦に至る過程を昭和陸軍の中枢の動きから追っていく良作。このあたりの事情はある程度知っていたつもりだったのだけど、改めて当時の事情を追っていくと第一次大戦帝国主義の時代背景を前提にして、言ってみれば軍事官僚の集団であった昭和陸軍中枢が、派閥抗争を繰り返しながら当事者ですら懐疑的であった対米開戦に突き進んでいく過程が半ば不可避の道として見えてくる。終わりなき戦争の時代に自存自衛を維持するため、広大なアジアの資源をめぐり列強と対立し、ヨーロッパ制覇を目指すナチスドイツと対抗するソ連、イギリス、対独戦とヨーロッパの足がかりとしてのイギリス防衛を視野に入れたアメリカの思惑が複雑に絡み合う中で、最終的に対米交渉が行き詰まり、勝利条件すらあやふやな対米戦に突き進む過程の一体どこでどこまで引き返せばあの結末に至らずに済んだのか、本書を読んでも明確な答えは出ない。しかし戦前政治の主要プレーヤーであった昭和陸軍の内幕を知る重要な一冊。

 

ナチスの戦争1918-1949 - 民族と人種の戦い (中公新書)

ナチスの戦争1918-1949 - 民族と人種の戦い (中公新書)

 

 

 今年になって、今更やる夫ヒトラースレを読んでみて結構面白かったのだけど、そんな時たまたま丸善行った時に見つけたもの。人種戦争という側面からナチスの戦争を捉え、敗色濃厚になってからもなおユダヤ人の絶滅に没頭するナチスの行動原理をよく描き出している一冊。ちと反ナチが前のめりになっている感がないでもないが、よくまとまっている。